詩の墓場 第二

まともに書く時間がないけれどブログの更新は続けたい。ので昔書いたものを引っ張り起こす。コピペと添削くらいならバイトの休憩中や移動時間でなんとかなるからだ。そうしてまたまた詩の墓場。

働いては次の職場、働いては次の職場。内臓が気持ち悪くなってきて、この生活を続けるのはまずいと感じている。

 

さて、簡単に作品の説明をしておく。最初の中途半端な擬古典風「祈り」はいつどのように書いたか思い出せないけど、気に入っている。最初のうちのいくつかをここに載せる。

次の短文群は、東京にいるとき、アスタが主催のグループ展に参加した時に書いた「精神の砂漠」という一連の文章からいくつか抜粋したものだ。読んだことのある人はほとんどいないと思う。

続いて「分解された恋」と「わたしの惑星」という詩だ。これは投稿した詩の一部だが、掲載されたか確認してない。されてないだろう。大したことのない習作だ。

 

「祈り」

朝顔の蔦がわが首をなどる

あゝ美しく死にたゐ

 

ぼくはぼくが

無名であることに

もはや耐えられなゐ

ぼくの肥大化した自意識は

悪性に変異しつゝある

 

幽閉 夜光する窓の内には

朝の曙光は差し込まなゐ

液晶の前で動作が止んで

苦い死を味わふ

 

光の満ちた部屋

エジソンが神を隠したんだ

まがい物の神の嬌声が続く

もはや救いは福音と光ではなく

静寂と闇にこそある

 

「精神の砂漠」

 

・ 行列はどこまでも続いていて、道に沿って進んでゆく。絶え間ないおしゃべりをしながら行進は続く。「どこに向かっているんだ?」と誰もが何度も思ったが、そのことを口にする者は少なかった。

 

・美しい野花の道を脇目もふらず早足で通り過ぎる。鎌倉で紫陽花の写真を撮るために。

 

・ある日目が覚めると、私は道の真ん中に横たわっていた。立ち上がりはしたものの、自分が今どこにいて、これからどこへ行けば良いか分からない。途方にくれた私は再び路上に身を横たえた。

 

・男は川に身を投げてみたものの、水深は浅く、男はどこへも運んでもらえずにただ血にまみれたまま突っ立っていた。

 

・私は骨折をしたこともなければ入院するほどの大病にかかったこともない。それはそれで、カラーボールがいっぱい詰め込まれた部屋の中にひとり取り残されているような感じだ。

 

・方位磁針が手に入ったが、サイコロがなくてはどうしようもない。

 

・人間は個人の意思と力でこれから歩んでゆく道を決定できると信じている。同調圧力と先導に身を任せ切った羊の群れとは違うのだと。

 

 

「わたしの彗星」

              

わたしの彗星がきえた

ネットで調べたり友達に聞いてみても

この上空にずっと浮かんで動かない

たった一つの彗星があったってこと

ほんとうにだれも知らなかった

昼も夜もなくそこにあったのだけれど

スマホで撮っても

濁点のようにしか映らなかったし

じつはわたしもそこまで気にかけていなかった

忙しかったしちょっと病んでた時期だったから

それでも彗星がこの空から突然いなくなって

言いようもない後悔にかられた

あの彗星は決して忘れられない何かだった

近ごろはわたしが彗星になっていて

宇宙を落下し続ける夢まで見るようになった

それからというもの

干上がった雨の海に立って

瞬きもせずに探している

まるでキューブリックモノリスみたい

そしてある日

わたしの彗星は太陽に衝突したんだってわかった

ちぎれた銀河みたいな一条の涙だけを残して

 

 

「分解された恋」

 

吸って吐いては目はうつろ

 

おれのピントはボケてるらしい

面倒なこと 欠如したもの

なにかが違うしどこか合わない

それはいつも通りのことだった

期待は絶対叶いやしない

 

コンビニでチョコレートバーをたくさん

蛍光灯の光がにじむセラミックの床

退屈な音楽と清潔な闇

レジ係はおれの罪を見抜いている

口の中を湿った肉がうごめき

脊椎の痺れが思考にまで取り憑く

 

道ばた枯れた土 蹴って昔を掘り返し

口から垂らした欲望と混ぜる

幽霊みたいにうつむいて

じっと足元を凝視めていると

かつて親しかったひとの声がきこえる

 

いろんな人がいろんなことを喋っていて

ただなんとなく気が滅入る

不純な血が心臓に押し出され全身を巡る

感度が乱高下する

 

ビニール袋が音を立てて転がっていく

ビルの窓 張り付いている耳と目と口

ビル 管 ビル ビル  ビルを這う管

生物的な襞襞(ひだひだ)にいずれみんな呑み込まれる

 

内側からサイレンが鳴る

 

これこそが恋しいって気持ちなんだって