春はもう街角に

このところは悪くない。それは、春が街角にやってきたからなのか、あまりに忙しく働きすぎているからなのかはわからないけれど。久しぶりにカフェにひとり。頭のいいバカにプロデュースされたポップなロックも、メッセージも遊び心も感じない焼き回しのラテアートが施されたココアでさえも僕を滅入らせることはできない。

たっぷり昼まで眠るつもりで夜更かししたのに、目が覚めると朝だった。暮らしのリズムはそう簡単には崩れない。朝も夜も働いている。昼はコールセンターで、夜は黒服。朝9時の始業に間に合うように家を出て、電車で天神まで行き、そこで8時間働く。それから一度帰って着替えてバイクに乗って夜の店で大体6時間仕事をする。家から駅までは遠いので、徒歩移動は全部ペニーに乗って人や車を避けて行く。それらが休みの日には寿司の配達のバイトをやっている。1日休みはほとんどなくて、時間もないし体力もない。肌が荒れ、口内炎が出来始めた。それでもいま、なぜだか心は晴れやかだ。2月のひどい雨雲がどこかへ出掛けて行ったからか、くよくよする暇も無いほど忙しいからか。

金を稼がないといけない。僕は海外にワーホリに行くのだ。もう一度。なんのためかはわからない。死ぬまでの暇つぶしの一環だとかそんなことは言わずに、世界を見たいが金がないからということにしておこう。つきつめれば、そんなのどっちも変わりゃしないのだが。

今日は夜の仕事だけだから、溜まっているタスクをこなす。掃除に洗濯に買い物にその他もろもろ。

腹が減ったからもう帰ろう。もうカフェで1200円も使ったから、自炊をするべきなんだけれど、井尻駅にはいい大衆食堂がある。でももう3時か。この時間やってなさそうだな。腹が減るのは決まって昼の営業が終わって夜営業の始まる前。そんな事実さえも今日の僕を滅入らせることはできない。